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ネパール3部作 1作目(複製画)

¥22,000 税込

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ネパール3部作のうち1作目

この旅で私は異なる国へ旅しただけでは無く、異なる時代へ旅したようだった。
まるでタイムマシンに乗ったようだ 。
あらゆる人間は歴史の中で局所的にのみ存在しうる。
過去については書籍や考古学的資料で見ることはできても実際に自分が体験す
ることはできない。
私は なるべく未来と過去をはっきり見ようとするのだが、マズイ頭の構造上
客観的な法則のようなものばかりに心を奪われがちで、そして大抵その自分勝
手な一種の決定論の中でぐるぐると堂々巡りばかりしている。
ネパールには我々が生きる時代とは異なる、しかし昔、日本にもあった生活が
存在する。
川で体を洗い、服を洗濯する人々。重い麻ぶくろを背負い田んぼを行き来する
農民。我が物顔で街をうろつく野犬や牛ら。歴史の彼方に葬り去られたと思っ
ていた情景がいきなり目の前に実存として現れる。その衝撃は筆舌に尽くしが
たい 。
そして次にこうした疑問が浮かぶ、この情景は遥かな古代からそうであったよ
うに不滅の物であるかと。たしかにそこには人間のあるべき姿、素朴なあり方
が存在するような気がする。しかし5年~10年 もしくは30年かかるかもしれな
いが、あの情景は必ず消えるであろう。
麻ぶくろはトラクターに取って代わられるだろうし、野犬はどこかへ姿を消す。
そして、ネパールの人民が素朴であればあるほどこの近代化の波は早く広まる。
彼らは自らの生活になんら特別性を見出してないし、それは歴史の少々先にい
る私たちが勝手に彼らの中に見出しているものだからだ。
私にはネパールの姿はどこか“ちぐはぐ”に見える。のどかな情景の中にもプラ
スチックのゴミがあるのはその典型だろう。おそらく、かつてゴミを川に流す
ことはなんら問題ではなかったのだろう。有機物として分解されただけであっ
たのだろう。プラスチックがこの国に流れ込んできても、人々は以前の感覚の
ままゴミを川に投げ捨てているのではなかろうか。
それは何故か有益だったり無害だった制度や思想が人々を疎外していく過程を
見るようだった 。カースト制や左手を不浄と考える風習、これらも元は合理
性のあったものだ。だがいつしか合理性は消え風習だけが残り人々を苦しめる
ようになってしまった。

2022年
ドローイングペン、色鉛筆、マーカー
サイズ:W297×H210(mm)

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